一体感 3

 「消えた後継者」のプレイスタート時点に置いて主人公とプレイヤーの間に差がないことは前述したとおりですが、実は「うしろに立つ少女」に置いてもそれは大して違いません。 
 両親と生き別れになって、その両親を捜すために家出しているという課程をもつ主人公は、確かにプレイヤーからほど遠いのですが、こうした点も含めて主人公の個性は「うしろに立つ少女」のストーリーには直接大きな影響を及ぼさないため、それほど問題ではないかと思われます。 

 また、「うしろに立つ少女」で登場する人物たちは私たちプレイヤーにとって初めて見る人々ですが、それは作中の主人公にとっても同じことです。この点、「消えた後継者」と「うしろに立つ少女」の主人公に”何も知らない度”では決して大きな差はないのです。 
 (例外的にあゆみちゃんだけは主人公も知らないのにプレイヤーは知っているというある意味で不思議な現象が起こっている気もしますけれど) 

 また、舞台が学校ということもあり、「うしろに立つ少女」では場面の雰囲気が多くのプレイヤーに伝わりやすいであろうことも、挙げておきたいと思います。丑美津高校内での捜査では、学校のいくつかの場所で主人公が聞き込み調査を行うわけですが、校門前(グラウンド)、美術室、職員室といった場所はだいたいその雰囲気が、どなたにもたやすく想像できる場所ではないかと思います。 
 校長室、旧校舎前、大鏡の前などは少しばかり特殊な場所になりますが、こうした場所にはBGMの変化や、場所の雰囲気を伝える一言が出るなど細かい配慮がされていて、その場の持つ気配が分かりやすいものにされていますね。 
  

 さらに、「うしろに立つ少女」において、主人公は最初から最後まで事件に対して第三者的立場にあります。 
 「うしろ?」で主人公の個性がゲーム本編にそれほど影響を与えないのはそのためです。 
 当然のことですが、ブラウン管のこちら側のプレイヤーはゲーム中の事件に対して第三者ですから、この点、「うしろに立つ少女」の主人公の立場は常にプレイヤー側に寄り添ったものとなります。 

 結果として、「うしろに立つ少女」の主人公には強くはないにせよ、それなりの一体感を多くのプレイヤーが持てるのではないか、ということが考えられます。 
 初めは主人公に違和感を覚えても、プレイする内に少しずつ主人公と一体化していける可能性があります。 

 しかしながら、「うしろ」で主人公は第三者ですから、主人公と同一化したからこそ感じられる感動というものは、「後継者」のようには存在しないかもしれません。犯人が振り向く瞬間に思いっきり怖い思いをするのが、「うしろに立つ少女」における一体感の一番の効用かもしれませんね。

 
 
 

  2001.Mar