ファミコン探偵倶楽部で使用されている曲にバッハの曲がある── というのは、思い出したように語られるお話のようです。
ここでは、この話題についてきちんと触れておこうと思います。
ファミコン探偵倶楽部のシリーズでは、確かにバッハ(J.S.バッハ)の曲が使用されています。
part1の「消えた後継者」の中では綾城家の曲として「2声のインヴェンション」より13番が、またpart2の「うしろに立つ少女」の中では校長室の曲として、同じく「2声のインヴェンション」より15番が使われています。
ディスク版ではどちらも曲の後半部分がカットされているようで、13番も15番もゲーム中で聞くより本当はもう少し長い曲です。
もっともどちらも1分30秒に満たない長さですが。
「うしろに立つ少女」のリメイクに伴い、15番はNP版で最後まで聞くことができるようになりました。
「2声のインヴェンション」がファミ探に使用されることになった背景も、少し考えてみましょう。
曲のイメージが場面の雰囲気に合ったというのはもちろん最大の要因でしょうけれど、その他にハードの能力が与えたであろう影響を無視することはできません。
当時、ディスクシステムの音源では4つの音を同時に鳴らすのが限界だったと聞いています。
ファミ探の場合ですと、メッセージが出るときに「ポポポポ‥‥」あるいは「カタカタ‥‥」というような音がしますので、まずこれで1音埋まります。
さらに効果音がこれに重なることがありますので、ここでも1音埋まります。
そうなると、BGMに使える音は残る2音のみと考えることが出来るでしょう。
「2声のインヴェンション」は「2声の」という部分が示すとおり、同時に使用する音は2音までです。
ピアノで考えますと、3つ以上の鍵を同時に押さえることがない曲ということになります。
ディスクシステムやファミコンといった、音源にやや不自由していた感のあるハードにとっては、もってこいの名曲といえたでしょう。
バッハの2声のインヴェンションは、現在でもピアノ初心者の練習曲としてきわめてよく用いられているようです。
もともとがクラヴィーアの練習曲として作られたものだそうでして、技巧的に難しい曲ではないからでしょう。
しかしながら、「インヴェンション」の全15曲はただの練習曲と呼ぶには惜しい芸術性の高さも兼ね備えていますので、現在でも多くのピアニストがこの曲を弾いています。
CDショップで探せば、この曲の入ったCDが見つかることと思います。
実際にCDをお探しになる場合ですが、その時は2声のインヴェンションとしてお探しになるのではなく「インヴェンションとシンフォニア」、あるいは「2声と3声のインヴェンション」でお求めになるのが良いでしょう。
「(2声の)インヴェンション」と「シンフォニア(3声のインヴェンション)」は大抵セットになっています。
余談になりますが、シンフォニアも全部で15曲あります。
楽譜を探される場合も同様です。
楽譜はわざわざ大型の楽器店などに行かれる必要はなく、ピアノ初心者向けの楽譜をある程度そろえている中型以上の書店に行けばそこそこの割合で見つけられるのではないかと思います。
さらに、インターネット上でクラシックのmidiを無料配布しているサイトからデータをダウンロードすることも可能です。
検索エンジンで「midi」と「インヴェンション」あたりの単語を用いれば、この曲のmidiデータを配布しているサイトがいくつもヒットするでしょう。
もちろん、ファミ探のmidiを取り扱っているサイトさんで見つけることも出来るはずです。
最後に、BS探偵倶楽部においてもクラシック系の音楽が一曲使用されています。
雰囲気などからして、その曲もバッハではないかと思うのですが、確証がありません。
これについては、情報をつかみ次第、またこちらでお知らせしたいと思います。