一体感 2

 「思い出す」ことと「初めて知る」ことは当然ですが全く違います。 
私の場合は(と予め断っておきます)、「消えた後継者」において、当初私自身との強烈な一体感を持っていた主人公が、作中で自分の過去を思い出すに従って、私自身とは異なる存在として分離して行くのを感じました。 

 振り返ってみるに、主人公である彼が私から完全に独立した瞬間は、主人公が自分の過去を完全に思い出したシーンであったと思います。彼が、これまで歩んできた自分の人生を自分のものとしてすべて受け入れたその時、作中の主人公は、プレイヤーである私とは完全に別個な存在となりました。 

 こう書くと大変否定的な意見のようで申し訳ないのですが、私は主人公が自分から分離したことに不快感を覚えたわけでは決してないのです。むしろ、不思議なすがすがしさ(?)を感じたほどでした。他人となった主人公に対して「思い出せてよかったね」と思えたというところです。 

 ただし、主人公と同化していたほうが、より強く感じられた感動などもあるでしょうから、それは惜しいことなのですが。 

 一方、主人公との一体感を保ったままでプレイを続けられた方ももちろんいらっしゃることと思います。 
 主人公が過去を思い出せば、まるで今知ったその事実を自分を思い出したかのように感じられた方もいらっしゃるのではないでしょうか? 
 羨ましい限りです。 

 主人公との一体感を維持しつづけるためには、ゲーム中盤までに、どれだけ主人公と同一化できているかという点が、一つのキーポイントであると私は考えます。 

 ゲーム終盤に入ると、主人公はどんどんストーリーの渦中の人となってゆき、事件を第三者的な立場から捜査する探偵ではなく、事件の被害者(当事者)としての立場が濃くなってゆくためです。ゲーム中盤までに主人公との強い一体感を覚えていなければ、この展開において、主人公に同化し続けるのはなかなか難しいはずです。劇中の主人公と、現実世界のプレイヤーとの立場が異なってくるからです。 

 立場が自分とは変わって行く主人公に食らいついていくには、そこまで主人公とプレイヤーとの間に差がないゲーム中盤までにしっかりと一体感を作っておかなければならないでしょう。 
 主人公に入り込んでおかなければいけないのだと思います。 

 そして、連帯感をいかに強められるか。これは、個々人の資質その他の問題でしょう。具体的に私を例にあげれば、私は年代・性別が主人公と異なっていたことが大きく作用し、主人公に同化し切れなかったのだと考えています。 

 こうしたものに限らず、ゲーム中盤まで主人公との一体感を維持できなかった方、あるいは一体感を持てなかった方は、後半においてプレイヤーから乖離していく主人公を感じられたのではないかと思いますが・・・・。 

 では、一方の「うしろに立つ少女」はどうでしょうか?

 
 

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  Feb.2001